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向山先生ミニ田んぼと食農教育
元奈良教育大学教授。現在は、日本農業教育学会評議員、全国農業教育研究会特別会員、農文協「技術教育」編集委員として農業教育・総合的な学習分野で活動されています。岩澤信夫が開発した「ミニ田んぼビオトープメダカの学校」の教材価値や学習指導の展開を研究してくださっています。子どもたちや学生・先生方に十割りそばの打ち方を教えています。
「食と農の応援団団員」http://www.ruralnet.or.jp/ouen/「食農教育アドバイザ−」として各地で食育の公演をしています。


  No.63「一日ニ玄米四合ト味噌ト少シノ野菜ヲタベ」を考える(2)
2010/01/14(Thu)

 宮澤賢治の有名な詩「雨ニモ負ケズ」の一節にある「一日ニ玄米四合ト味噌ト少シノ野菜ヲタベ」(昭和6年作)は、「サウイウモノニワタシハナリタイ」で結ばれていますが、自分の理想とする人間像のなかに出てくる食事がなぜ白米でなく玄米であったのか。賢治は玄米の味や栄養価をわかって書いていたのか、私じしん未知のままですが、本稿は宮澤賢治の研究が目的ではないので、そのまま話を進めることにします。
 玄米四合は、1合を約150グラムとすると、約600グラムになります。現在の一日一人消費量約170グラムとすると約3.5倍にあたります。玄米100グラム当たりの熱量は350kカロリ-ですから600グラムだと2,100kcalとなります。現在は男女別、年齢別、身体活動レベルなどによって栄養所要量が細かく計算されています。例えば、教科書などに取り上げられている30〜49才では男2,650kcal、女2,000kcalとなっています。これは男性の場合わずかに不足しますが、女性の場合一日の必要量を十分に満たしている量になります。
 当時は主食から7割程度の熱量をとるのが標準とされていたので、まるで計算したみたいです。もっとも、熱量だけ見れば、発芽玄米だけが274kcalと僅かに少ないのですが、精白米も胚芽米もほとんど熱量は変わらないので、比較して優位性をうんぬんする意味はありません。
 次に蛋白質ですが、玄米100グラム当たり6.8グラム(白米6.1)です。四合600グラムでは40.8グラムになります。成人一人当たりの食品摂取基準量は、蛋白質男60、女50グラムですから、玄米だけでは不足しますが、賢治の詩には味噌が入っていて、味噌の原料である大豆は蛋白質が100グラム当たり35.3g含まれているので、玄米と味噌を合わせると必要量にたっします。
 次に脂質の必要量は総エネルギ−に占める割合で算定していて、男女共に1〜29才で20〜30%、30〜69才で20〜25%などとなっています。玄米100g中で2.7、精白米では0.9gとなっています。600グラムでは16.2グラムをとれます。
蛋白質、脂肪、炭水化物は、三大栄養素ですが、玄米四合と味噌で、三大栄養素をほぼ満たすと私は推計しました。
 もっともここまでは、玄米も精白米も胚芽米もほとんど変わりなく、発芽玄米だけが熱量274kcal、蛋白質4.8グラムと少なくなっています。
 次に食物繊維はどうでしょうか。食物繊維の必要量は、成人で男20、女17と定められています。成分量では白米0.5に対して玄米は3gと、じつに6倍含まれているので、四合食べると18g、大豆の食物繊維4.1gと合わせると、食物繊維はほぼ基準量を満たしていると言えます。
 食物繊維は便秘解消と関連して言われますが、玄米食の人にいわせると、3日続けると効果てきめんといいます。
このように見てくると、熱量、蛋白質、脂質では玄米と精白米では栄養上ほとんど差はありません。熱量の7割を主食としてのお米から摂っていたことに注目します。もし玄米ならば納得できます。玄米については繊維質の多さに優れた点があることは見逃せません。
 玄米が精白米に比べて優れた点は、ビタミンとミネラル成分にありますが、細かいことになるので次回にもちこしです。
 原稿を書きながら思ったことは、農業技術者であり科学者であり文学者でもあり芸術家でもあったと言われている宮澤賢治のこと、玄米四合と味噌と野菜は、考えに考えた末、計算しつくして書いた意味のあるものだったのではないかと思いはじめています。


向山玉雄


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