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魚茶子氏のコラム
長年、岩澤式不耕起移植技術の開発の経緯をウォッチングしてきた魚茶子氏。
日本の農政や慣行農法ならず各地の民間農業技術を調べられ、国や自治体の取り組み、日本各地の生産現場や資材販売、農産物流通の現場にも精通して、各方面から農を取り巻く世界のウォッチングを続けておられます。
本人曰く、勝手気ままな存在です。私は魚好き、好きなお魚で「ちゃのこ」である。


  ずばり言うとね(44)「東京農大でエサ米の栽培と飼料化の同時研究が進んでいる」
2009/07/20(Mon)

 先のコラム43号で、直ちに減反を廃止したとて急にダブつくほど米生産が復活することはないと書いた。読書の皆様はご自身や近場の田んぼを眺め、どう考えているだろうか。小欄が強弁した理由は単純である。それ以来38年に及ぶ減反強制が効き、米農家の生産意欲が急激に盛り上がることはないと見るからである。農家は市況を読んで判断する。売れないことが分かっていて野放図に作りはしない。しかも水田の耕作放棄は止むどころか今後も増える。
 ところで、現実に生きている水田だが、全国で220万ヘクタールあるかないかと思うがどうだろう。耕作放棄した水田を差っ引いている。食用米は役所が調べた米生産面積より、ずっと多い面積で作付けされ流通している。なのに必要な米が手に入り難い現実が続く。商売で米を扱ってみると分かるが、これは一体どうしたわけか。
 政府は様々な統計数字を都合よくこね回し、21世紀新農政なるものを理屈立てている。根拠にしている統計数字は訳の分からないものと相場が決まっている。米の生産面積など実態を捉え切れまい。だから政府農政は現実離れした(学校秀才型)机上論を横行させる。下手な政策を繰り出さず、農家や農業生産法人に自由に任せれば済むものを。
 と、統計数字をコケにしてきたが、食用米は急にダブつかないものの、商品市場だから売れ残る米は出てくる。これに手を打たないなら商売ベタである。
 そこで登場するのは、こうした売れ残りをエサ米へ仕向ける単純政策、それにエサ米の生産、しかも耕作放棄水田を全利用できる生産対策である。因みに飼料自給率は長らく25パーセントと低空飛行、アメリカなどからトウモロコシを大量に輸入している。
 イントロが長くなったが今回はエサ米のいい話である。東京農大農学部(厚木キャンパス)では、エサ米の栽培と飼料化の画期的な同時研究を進めている。研究している学者は畜産学科畜産マネジメント研究室の信岡誠治准教授である。
 エサ米構想はこれまでに何度も官民でチャレンジして形にならなかった。しかし輸入飼料の高騰と不安定な供給という現実が後を押し、自国生産を模索し始めた。
 これから紹介する内容は、実践総合農学会の2009年度総会におけるシンポジウム(平成21年7月4日、於東京農大世田谷キャンパス)で、信岡先生が発表されたもの。直感的にこれはいけると思った。何としても実現しなければならないトップ研究に違いない。
 先生の研究は、@減反を廃止しながら、A耕作放棄水田を利用し、B低い飼料自給率を上げ、C飼料の高騰で苦しむ畜産業をテコ入れするため、と分かり易い。
 研究はほぼ完成している。残る問題はエサ米実現のためのアプローチで、@政府と業界のやる気、A農家の意識改革、Bコストダウン、と指摘する。生産コストはキロ30〜40円(3万円〜4万円/10アール)レベルで勝負になる。既に研究では、実際の水田でこのコスト水準を実現する方法を組み立てている。
 ようするに、食用米とは異なったエサ米生産、つまり「デントライス」(東北大)の生産流通とこれを利用する経済構造の創設。デフレ下の日本経済にはもってこいと思う。
 輸入飼料並みの低コスト化は、超多収米による省略栽培(10アール6時間以下)、コンバインなどの稼動面積の引き上げ、減価償却費の低減などで可能とはじく。
 以下、研究の概要を記す。
1. 10アール1トン収穫できる品種を利用
*超多収品種の「モミロマン」を使う。もっと多収品種(1,250キロ)  が欲しい。
*モミロマンは全粒が乳白米(白濁にごり)、高タンパク米なので、食用に  回らない。
 (食ってみたがバサバサで実にまずい。ただし飢饉時には食料に回せる)
*平成20年産は立毛乾燥、水分14.5パーセントに自然乾燥して11月 1日収穫、10アールモミ重で1,073キロを収穫した。立毛(たちげ)とは、田んぼなどに今作ってある農作物のことで、刈り取らず立ったままの状態をいう。
 スズメの被害あり。(対策:田んぼ見回りに行かないこと、見るとがっかりするから?)
*エサ米は1トン袋(フレコン)でモミ米流通、ワラも使う。牛、豚、鶏な どはモミ米を給与、牛はワラも給与。ワラは固体発酵(農大の特許技術) させ、エタノールを生産してから残りカスを給与する。(食用米は玄米流 通)
2.栽培方法は超省略型
*畦畝板を打って15センチの湛水深水栽培、収穫まで全然手をかけない。
*耕起移植で10アール30分、深水の水圧で雑草はかなり抑えられる。
*畜糞堆肥3トン/10アール(土壌肥料学者から残留チッソの地下水汚染が心配と指摘あり、目下計測中)
*化学農薬・肥料は絶対に使わない。いもち病、紋枯れ病に強い品種が必要。
3.給与結果は理想的
*肉・鶏卵の品質は極上(美味い)、人間の健康維持に良いオレイン酸が増加。
*家畜、家禽が健康になる。肉鶏の砂肝は2倍くらいに厚くなる。
4.経済効果は文句なし
*鶏(肉と採卵)、豚、牛(肉と搾乳)、馬、羊、山羊などに配合給与が可能
*トウモロコシ輸入の75パーセントをエサ米に変換可能。トウモロコシ輸 入に5,000億円払っている。一部をエサ米生産農家に直接支払えばコス トを抑えられる。
*エサ米超多収穫品種の開発で1,250キロ×90万ヘクタール=1,12 5万トンのモミ米生産が可能。海外飼料相場に影響されない畜産実現の必 要量だ。
 雑感。岩澤式不耕起移植栽培を進言したが信岡先生は乾田直播をやりたい意向。用水が早く切られて冬期湛水できないのが理由(信岡談)。残念無念。
 信岡式エサ米生産技術に、@万田酵素の「農業31号」による超生長効果、A飯山式「グルンバ」植物乳酸菌による畜糞発酵と消毒効果を技術アップすれば完璧。どれも税金を使わず開発された民間技術。
 信岡先生は畜産経営やマーケティングを専攻する学者。稲作はズブの素人なそうな(本人談)。だから稲作の常識を無視して、有用技術を開発できた。不耕起移植栽培も岩澤さんが常識の壁を切り崩して完成させた。同じだ。
 常識は敵。中国でさえ考えないような「減反農政」をぶっ飛ばせ! 我が国水田農業のドンキホーテになるといい。
 それにしてもエサ米の品種名が変てこ。モミロマン、はまさり、タカナリ・・・とは食用米命名の延長だ。エサ米は食用米と別物。とのイメージが浮かぶ品種名を付けたい。広く国民に公募したら如何。


魚茶子


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